昨今は日本でもSDGsが広まり、日本企業でも「ESG(企業の社会的責任)」について意識を持っている会社も多くありますが、特に欧米系の外資系企業においては、既に10年ほど前からは、社内でこれらの活動が活発に行われています。
多くの外資系IT企業では、ERG (Employee Resource Group) と呼ばれる共通の特性を持つ従業員で構成される組織がグローバルで存在しています。内容はさまざまで、女性を中心に構成されていたり、黒人やヒスパニック、アジア人などの人種を中心に構成されていたり、若年世代などの年齢層で構成されていたり、LGBTQや環境保全、動物愛護などの共通の有志で構成されている組織もあります。
もちろん強制ではありませんが、多くの従業員がこれらにも所属して、日本でもさまざま活動を行っている事も珍しくありません。通常業務も忙しい最中ですが、普段、業務で関わらない人たちとグローバルで接する機会もあるので、人脈も広がりますし、これらの活動にも情熱を注げる職場環境がモチベーションになっている方もいます。僕も会社員時代には、実際に幾つかのERGに参加をしていました。
これらのERGが主体となって、各種のボランティア活動の企画がなされ、定期的に啓蒙やイベントが社内外で実施されています。多くの外資系IT企業でも従業員に対して、「年間のボランティア活動参加時間」の目標値と達成率がトラックされていて、管理職は、自組織のこれら達成率も向上させる様、上層からは指示が出ます。
まあ、日本に居ると「正直、これってボランティア活動の強制では?」と思いますが、それによって査定に響くところまではありませんし、あくまでも善行を推進する事に問題はないので、管理されるところまでは致し方ない、と思っていました。
世の中には、さまざまなマイノリティーが存在し、それぞれに「生きずらさ」を感じている中で、それぞれが状況を改善できる様に当事者として、支援者として、企業の中でも日々活動されているのは、大変意義があると感じます。
僕が勤めた事のある外資系企業では、本社を置くアメリカの州で提出されたとある法案がマイノリティーの人権を侵害しているとして、多くの住民から反対が出てそれは、地元では多くの雇用を生み、経済的な力を持っていたその企業のCEOまで直談判されるほどでした。
それらの反対意見に賛同したその企業のCEOは「その法案を通すのであれば、当企業はこの州から撤退する」旨を明言したそうです。結果、その法案は否決されたそうですが「企業の経済的パワーで人々の人権を守る事ができる」とその経験から「企業はビジネスだけではなく社会のインフラになり得る」ことを実感したそうです。
政治に期待が出来なくなったら、人々は企業を信頼しその力を社会のために活かしてほしいと望むのかも知れません。